「心・言葉・行動」で有言実行してきた歩み努力と情熱で描くキャリアの軌跡「自分のできることで業界に恩返しをしたい」東京・日本橋茅場町にオフィスを構える株式会社エヌイーオー企画の常務取締役、窪田知香氏はそう語る。飲食業界に特化した展示会「焼肉ビジネスフェア」と「居酒屋JAPAN」を主催する同社で、女性の活躍推進に情熱を注いでいる彼女の言葉には力がある。窪田氏が描く未来図は明確だ。「女性店長をもっと増やし、女性がより輝ける環境を作っていきたい」。その使命感の根底には、自身の人生経験と飲食業界への深い愛情がある。挑戦心を育んだバレエ人生窪田氏の情熱的な姿勢は幼少期から培われてきた。5歳からバレエを始め、大学卒業まで続けた経験が、彼女の人格形成に大きな影響を与えている。「子どもの頃はいろいろな習い事をしていましたが、中学生になった時に自分が本当に打ち込めるものを選びました」と窪田氏は振り返る。バレエを選んだ理由は明確だった。「自分がやるからには、一番になれる分野を選びたかった」という思いだ。その視点はユニークだった。他のスポーツでは常に2番、3番の位置にいた経験から、誰もやっていないバレエなら自分が輝けると考えたのだ。この「戦略的思考」は現在のビジネスアプローチにも通じている。当時から目標達成への執着心も強かった。「一度決めたことは最後までやり抜く」という家庭環境で育った窪田氏は、バレエも徹底的に打ち込んだ。高校時代は毎日親に送り迎えしてもらい、30分かけてレッスン場に通った。「みんな週に1〜2回だったけど、倍やれば追いつくかな、3倍やれば追い越せるかな、と考えて集中的に練習しました」。その姿勢は今のビジネス感覚にも通じる原点だ。転機と新たな挑戦大学卒業後、窪田氏は東京へ移住。当初は芸能事務所に所属し、イベントコンパニオンなどの仕事をしていた。しかし26歳の時、人生の大きな転機が訪れる。「このままではいけない。自分で稼いでいかなければ」という危機感から、展示会の企画運営会社であるエヌイーオー企画への入社を決意。ゼロからのスタートだった。「当時は営業経験もなく、展示会業界のことも知らなかった」と窪田氏は振り返る。しかし、不安を乗り越え、目標年収を設定し周りに宣言。その言葉通り、30歳前には会社の成長に大きく貢献し、年収は目標を達成した。この時期、窪田氏は自身の人生計画も明確に持っていた。「30歳までには結婚する」という目標を立て、それも計画通り実現させた。「決めたことは必ず実行する」という幼少期からの習慣が、ここでも活きていた。飲食業界との出会いと恩返しの思い窪田氏が飲食業界と深く関わるようになったのは、エヌイーオー企画での「焼肉ビジネスフェア」の立ち上げからだ。当初は業界のことをほとんど知らなかったが、そこで経験した人々の温かさが彼女の心を動かした。「飲食業界の人は本当に素晴らしい。何も知らなかった私に、みんな親身になって教えてくれました」と窪田氏は感謝を込めて語る。特に初期に出会った飲食店の経営者たちは、業界の知識ゼロだった窪田氏を温かく受け入れ、サポートしてくれた。「あの時の恩を絶対に返したい」という思いが、今の彼女の原動力になっている。「私が最初に参加させてもらった時、業界のことは何も知らなかった。本当に基本的なことから教えてもらいました。その優しさに感動し、いつか自分も業界に貢献したいと思うようになりました」女性活躍の場を広げる挑戦エヌイーオー企画での経験を通じて、窪田氏はビジネスの世界、特に飲食業界における女性の可能性と課題を痛感するようになった。社内でも女性スタッフを積極的に採用し、現在では社員の9割が女性という環境を作り上げている。「私たちの会社には優秀な女性がたくさんいます。大企業にこだわらず、多様な経験を求めて中小企業に来てくれる方が多いんです」と窪田氏は言う。女性が持つマルチタスク能力や柔軟性は、展示会運営のような多岐にわたる業務に特に適しているという。しかし飲食業界全体を見ると、女性の活躍はまだ限定的だ。「20代、30代の若い世代では女性店長も増えていますが、40代、50代になると極端に少なくなります。40店舗中2名だけというケースも珍しくありません」この現状を変えるため、窪田氏は「女性店長育成」のための研修プログラムを企画している。「外国人雇用も大切ですが、女性という国内の人材をもっと活用すれば、業界の人手不足問題も改善できるはず」と彼女は確信している。飲食業界の魅力と可能性窪田氏が感じる飲食業界の最大の魅力は「人の温かさ」だ。業界の人々は困っている人を助け、互いに支え合う文化がある。そして何より、仕事への情熱と「想い」を持った人が多い。「飲食業界は人が本当に素晴らしい。皆さん自分の仕事に想いを持っていて、困ったときは助け合う文化があります」と窪田氏は言う。展示会を通じて業界の発展に貢献してきた窪田氏だが、今後はさらに一歩踏み込んだ活動を計画している。「女性店長のネットワークを作り、彼女たちの声を業界に届けたい」と意気込む。実際に現場で輝く女性店長たちを講師として招き、次世代の女性リーダーを育てるプログラムも構想中だ。「リアルな経験を共有することで、もっと多くの女性が飲食業界でキャリアを描けるようにしたい」未来へのビジョン窪田氏は今、キャリアの集大成として自らの経験を業界に還元することを考えている。レストランテック協会の専務理事としても活動し、「チームG」を結成して女性の活躍するチーム環境づくりに注力している。「カウンセリング実務士やチームビルディングアドバイザーの資格も活かして、女性の部下を持つ上司向けの研修や、チーム・組織づくりの支援をしています」と窪田氏は説明する。彼女が描く理想の未来は、業界の垣根を超えて女性が活躍できる社会だ。「飲食業界をスタートに、多くの産業で女性がもっと輝ける環境づくりに貢献したい。それが私の最後の仕事になればと思っています」窪田氏には、成功への明確な哲学がある。「心・言葉・行動という順番で結果が生まれる」と彼女は言う。「思ったことを言葉にして行動すると、必ず結果が出る。言葉にするだけで協力してくれる人が現れて、道が開けてくるんです」この信念は実際の経験から生まれたものだ。「思いを言葉にすることで、『こういうのやってみたらいいんじゃない?』と提案してくれる人が出てきたり、活動の場が広がったりします。そして行動することで必ず繋がりが生まれる。この『心・言葉・行動』の流れを大切にしています」と語る窪田氏。ユーモアを交えて「ただ、ダイエットだけはこの法則が通用しないんです」と笑う姿も印象的だ。確固たる目標と行動力で、常に自分の人生を切り開いてきた窪田氏。バレエで培った努力の精神と飲食業界で出会った人々への恩返しの気持ちが、彼女の原動力となっている。「この業界に恩返しできるのは、女性の活躍を推進することだと思います。それが私にできる唯一のことです」と窪田氏は力強く語る。飲食業界は今、大きな変革期を迎えている。人手不足や働き方改革など様々な課題を抱える中、窪田氏の提案する「女性の力」という視点は、業界に新たな風を吹き込む可能性を秘めている。「女性が活躍できる環境を作ることで、業界全体がプラスになる。それが私の信念です」窪田氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。必ず彼女の情熱が実を結び、飲食業界に新たな未来が拓かれるはずだ。