人とのつながりに夢中になる 「マネーフォワードのおかげで、業務改善できて助かっているよ」──そんな一言が、坂本奈月氏の仕事への原動力となっている。株式会社マネーフォワードでセールスを担当する坂本氏は、テクノロジーと人をつなぐ仕事に情熱を注ぐ一方で、学生時代から続く飲食業界との深いつながりを大切にしている。 吹奏楽部で育まれた「チームで成し遂げる」という価値観 坂本氏の人生を語る上で欠かせないのが、中学・高校時代の6年間にわたる吹奏楽部での経験だ。打楽器セクションでティンパニやドラムを担当し、チーム一丸となって音楽を創り上げる喜びを知った。 「私は運動が本当に極端にできなかったので、吹奏楽部しか選択肢がありませんでした。でも今思えば、それが良かったんです」 吹奏楽部での経験は単なる音楽活動以上の意味を持っていた。「めちゃめちゃチームプレーで、かつ女の子ばっかりなので、チーム力とかコミュニケーション力はそこで鍛えられました」と振り返る。 楽器によってコンクール出場の可否が決まる厳しい競争環境の中で、坂本氏は「チームで何かを成し遂げる」ことの素晴らしさを体感した。この経験が、後の人生における価値観の基盤となっていく。 大学時代のボランティア活動──「誰かのために何かできる」素晴らしさ 同志社大学に進学した坂本氏は、新たな挑戦としてボランティアサークルに参加する。この選択には、深い個人的な体験が背景にあった。 「中学の時に父親が他界しているんです。その時に結構いろんな人にも支えてもらったりして、その翌年に震災があって。テレビのニュースを見て、誰かのために何かできる人たちって結構素敵だなって、シンプルに思ったんです」 14歳という多感な時期に経験した喪失と、社会の大きな変化。これらの出来事が、坂本氏の心に「人のために何かをしたい」という思いを芽生えさせた。 参加したボランティアサークルは、地域活性化、環境保護、災害救援、海外支援という4つの軸で活動する大規模な団体だった。当時4000人もの学生が所属し、全国の大学から参加者が集まる活発な組織だった。 坂本氏は災害救援を中心に活動し、四年生の時には西日本のリーダーとして組織をまとめる役割を担った。「自分たちで企画を立てて、全国から学生を集めて、現地の人たちと対話する」という貴重な経験を積んだ。 特に印象深いのは、卒業直前に愛媛県宇和島で行った復興支援活動だ。「最後だからやろう」という思いで、仲間たちと共に企画から実行まで手がけた。「自分たちで作ったのもそうですし、現場の人たちと対話したことがすごく印象に残っています」 この経験が、後の坂本氏のキャリアにおける「お客様に寄り添う」という姿勢の原点となっている。 飲食業界との最初の出会い 坂本氏が飲食業界に初めて足を踏み入れたのは、大学一年生の時だった。アルバイト先として選んだのは、家族レストラン。京都での一人暮らしと活発なボランティア活動を支える大切な収入源だった。 「大学一年生から四年間働いていました。4年間ずっと同じところで」 4年間という長期にわたって同じ職場で働き続けたことは、坂本氏の責任感と継続力を物語っている。アルバイトリーダーのような制度はなかったものの、フリーターの先輩たちと協力しながら職場を支える経験を積んだ。 この経験が、坂本氏に飲食業界の魅力を教えてくれた。お客様に直接サービスを提供し、喜んでもらえる瞬間を共有する。チームメンバーと協力して忙しい時間帯を乗り切る。そこには、音楽で培ったチームワークと共通する何かがあった。 「人と関わるのがすごく好きだったので、お客様との接点がある仕事は楽しかったです」 マネーフォワードへの転職──人を支えるキャリアの発展 大学卒業後、坂本氏はに入社する。人材業界の成長期にあって、特に保育業界に特化した求人広告の営業を担当した。 5年間という長期にわたって保育業界という専門性の高い領域で働く、坂本氏は「相手のニーズを深く理解し、最適なソリューションを提供する」という営業の本質を学んだ。 「人材サービスだと、マストで必要なところに届けに行くという感じなので、営業としてはそんなに難しくないですが、その後のSaaSサービスとかになってくると、お客さんが感じていないニーズに対して付加価値を届けるという感じになってくるので」 この気づきが、坂本氏の次のキャリアステップへの原動力となった。入社当初は「マネーフォワード ビジネスカード」のカスタマーサクセス立ち上げを担当した。このプロダクトは、法人・個人事業主向けに初期費用・年会費無料で提供される革新的なビジネスカードサービスで、ポイント還元率1~3%、発行枚数上限なし、リアルタイムでの利用明細反映など、従来の法人カードにはない特徴を持っている。「カスタマーサクセスの基盤構築という重要な役割でしたが、より直接的にお客様とのコミュニケーションを取りたいという思いもありました」と坂本氏は振り返る。現在の飲食業界向け営業チームに異動してからは、本来の力を発揮している。 「人とハイタッチで関わっていく方が私は好きだったので、今のチームでは、お客様の課題を直接お聞きして、一緒に解決策を考えていくことができます」 飲食業界の未来への思い──テクノロジーで変わる業界の可能性 現在、坂本氏は飲食業界の企業に向けてマネーフォワードのサービスを提案する仕事に従事している。大学時代のアルバイト経験が、思わぬ形で活かされることになった。 「飲食業界は中小企業がほとんどで、経営者の方々は本当に現場で頑張っている。でも、バックオフィス業務に時間を取られて、本来やりたい料理やサービスに集中できないという課題を抱えています」 坂本氏が提案するマネーフォワード ビジネスカードは、まさにそんな飲食業界の課題を解決するソリューションだ。従業員や部署ごとに何枚でも発行可能で、小口現金や立替経費をゼロにできる。リアルタイムで利用明細が反映されるため、月次決算の早期化も可能になる。 「例えば、複数店舗を運営している飲食チェーンでは、各店舗にカードを配布することで、食材の仕入れから消耗品の購入まで、すべての経費がリアルタイムで把握できるようになります。経営者は数字の管理に追われることなく、メニュー開発や接客サービスの向上に集中できるんです」 この仕事で最も大切にしているのは、お客様との対話だ。ボランティア活動で培った「現場の人たちと対話する」経験が、ここでも活かされている。 「データからお客さんのニーズを取るとかは割と苦手で、仮説でしかないと思っちゃうんです。直接お客様と関われて、そこを個人的な営業数字だけじゃなくて、しっかりプロダクトに反映したり、マーケティング戦略に反映させていこうというのが楽しいです」 そして現在の仕事を通じて、坂本氏は飲食業界の新たな可能性を感じている。「テクノロジーを活用することで、従来の『忙しくて大変』というイメージを変えることができる。効率化によって生まれた時間を、より創造的な仕事に使えるようになると思います。」 坂本氏が考える飲食業界の魅力は、何よりも「人とのつながり」にある。「飲食業界って、お客様に直接喜んでもらえる瞬間がある。料理を提供して『美味しい』と言ってもらえる、サービスに感謝してもらえる。そういう直接的な反応がもらえる業界って、実はそんなに多くないと思います。なので、今後も飲食業界の発展に向けてバックオフィスから沢山のサポートをしていきたいと思っています。